私の母が着物の先生の資格を持っていたので、小さい頃はよく祝い事などで着物を着ていました。
私が成人する時は母や祖母達が素敵な振袖を買ってくれて、私は成人式当日をとても楽しみにしていました。
ところが成人式当日、なんと雪で辺り一面真っ白になってしまったんです。
外はそんな状態ですが成人式はそのままやる事になり、流石に踏み荒らされて泥でぐちゃぐちゃになった道を、折角買って貰った振袖を着て歩きたくありませんでした。
そんな私に母が箪笥から藍色の小紋の着物を出してきて、成人式にはこれを着ていけばいいと提案してくれたんです。
小紋の着物なら洗えるので多少汚しても大丈夫だからという事でした。
振袖は後日写真を撮る時に着る事にして、私は母の言う通りに小紋の着物で成人式に行きました。
式場では色鮮やかな振袖を着た女の子達が、案の定、泥で汚れた道を着物を汚さぬように恐る恐る歩いていてとても大変そうでした。
私はその間をスイスイとすり抜けて式場に入り、そこで友人に合流しました。
会って早々友人は小紋の着物姿の私を見て、「お姫様達の中に紛れ込んだ町娘みたい」と言うので、周りを見渡して「違いない」と納得して一緒になって笑ったのはいい思い出です。
成人式を振袖で迎えられなかったのは残念でしたが、あの日の出来事は一生忘れられない楽しい思い出になりました。